1975年2月末。

　有人月面着陸を行うための超大型ロケット「N1」は、バイコヌール宇宙基地内の工場で、3月X日に決行される打ち上げの最終チェックを終えました。

 

　下の写真は、工場内でのN1ロケットの第一段を後ろから撮影したものです（1968年撮影）。N1ロケットの第一段は、NK-33エンジンを30基備え、合計推力は5065t（乗用車5000台分！）です。N1ロケットの第一段は、ユニット単体としては、アメリカのサターンⅤロケット第一段の3440t、スペースシャトルの2875トンを軽く上回る、人類史上最強・最大の打ち上げロケットです。右下に立っている人間と比較すれば、その巨大さがわかるでしょう。

 

 

　N1ロケット第一段には、30基のエンジンを制御するために、「KORD」というコンピューターシステムが搭載されています。各エンジンにはセンサーが付けられ、30基のエンジンのうちの一つに異常が発生した場合は、故障したエンジンとその対極にあるエンジンをストップさせ、全体のバランスを保って上昇を続けさせる、というものです。