グリニッジ標準時　 5時49分37秒から、 6時21分11秒までの間、約33分間。
　ロディナ 宇宙船は、地球を見ることができない、月の裏側を通過します。月への最接近時、月面との距離は2420kmもあります。対して、アポロ宇宙船は高度100キロメートル程度です。月の直径は3474km。超・荒っぽく考えると、宇宙船と月面との距離を1としたとき、月の半径は√2/2です。よって、レオノフ・マカロフ飛行士は、ロディナ宇宙船の窓から、視野60度に広がる「丸い裏満月」を見ることが出来ます。

　このとき、宇宙船の速度は、秒速わずか600メートル。2420kmも離れた「裏満月」は、普段我々が、天上にある満月が、一時間につき15度移動しているにも関わらず静止してるように感じるのと同様、まるで見知らぬ巨大な天体が漆黒の天に形も位置も変えずに静止しているように見えるでしょう。

 

 

　生命維持装置のファンが回る、パソコンのようなブーンというかすかな音だけが響く、地球から40万キロ近く離れた、月の裏側上空。

 

　1959年にルナ3号が撮影するまで、絶対に見ることが出来なかった月の裏側は、人類史上、様々な国の様々な偉人・文化人・小説家に、あれこれ想像・推測されて、それらを想像した人々は、月の裏側を見ることなくこの世を去りました。

 

　しかし、今我々は、地上交信が完全に遮断されたこの場所で、人類史上、いや、地球に生物が誕生して以来初めて、肉眼で月の裏側全体を、眺めている。

 

　感受性豊かなレオノフ飛行士は、何を思う？？